秀丸メールの思うところ

インターネットが普及し始めたのは 1995 年ぐらい。僕がインターネットを始めたのは 1997 年ぐらい。

インターネットを始めるときに吟味に吟味を重ねて選んだのがメールクライアントだ。当時何を評価したのかは思い出せないけど、最終的に選んだのは Becky! だった。最初はフリーソフトを評価した。メールクライアントを探したりしていると、Becky! の評判がよいことに気が付き始めた。でも、Becky!シェアウェアだからすぐに使ってみようとは思わなかった。どういうきっかけで Becky! をダウンロードしたのかは覚えていないけど、使ってみたら即決定した。これしかないと。

それ以降、数年間、ずっと Becky! を使用してきた。OS は Win95、Win98、Win2k と代わっても、Becky! はずっと使ってきた。他のメールクライアントを使ってみようとは思わなかった。そう、サイトー企画がメールクライアントを作るまでは・・・。

サイトー企画のメールクライアントは、なんとメールエディタが秀丸だっていうじゃないですか。しかも、秀丸ユーザは無償で使用できるというたいそうな太っ腹。これは乗り換えろと言っているのと同じでは。

話はそれるけど、シェアウェアのよいところは、購入前に試用できること、価格がお手ごろなこと、バージョンアップが無償なこと、ユーザの意見が取り入れられることだと思う。RimArts もサイトー企画もとてもユーザ思いなシェアウェア作家だと思い、敬意を表したい。

閑話休題。長年愛した Becky! にお別れするのはつらいけど、新しい恋人が見つかってしまったので、うきうきしながら乗り換えてみた。でも、すぐに昔の恋人に戻ってしまった。付き合い始めてすぐの恋人と長年苦楽を分かち合い愛し合った恋人を比較しちゃあ、新しい恋人に申し訳ないんだけど、やっぱりできることが少なかったり勝手が違ったりして、乗り換えられないことに気が付いた。メールエディタが秀丸なのはとても魅力的だったけど、Becky! の Dana も全然悪くない。むしろ慣れている分よかったりして。

きっかけはなんだったか。Becky! が不安定になっていったのが原因だったか。たぶんプラグインの入れすぎ。欲張りすぎたんだと思う。前回サイトー企画のメールクライアントへの乗り換えを試みたのが、2〜3 年前だろう。入れすぎたプラグインを整頓すればよいものを、またしてもメールクライアントの乗り換えを考えてみてしまった。このときは巷で話題の Thunderbird を試してみたくなったからであり、ついでに秀丸メールも同時に使ってみるか、程度だった。

Thunderbird はメールを読むのはとても快適だけど、メールを探すのは苦手。添付ファイルが探せないのは痛すぎ。もしかするとアドオンがあるのかも知れないけど、探しきれなかった。結構探したんだけどね。

秀丸メールは検索が強力だった。HTML メールが表示できないのは痛いけど、HTML を表示したときに添付されている形の HTML をダブルクリックすればいいかと割り切ればよいと思った。何よりよかったのは、メールエディタ上で秀丸マクロが動くことだ。今まで Becky! を使っていたときも、時々秀丸で編集することがあった。秀丸メールを使えば、それがなくなる(完全になくなるわけじゃなかったけどね)。

Becky! は開発が停滞(というか安定)してしまっていて、バージョンアップがあまりない一方、秀丸メールはこれからのメールクライアントなので、開発も頻繁だし、サイトー企画は好きだし、昔よりもかなりよくなっているし、最近の僕の Becky! はなんだか不安定だし、などなどの複合的な理由で秀丸メールに乗り換えることに決めた。

乗り換えてから今現在で 3 年ぐらいかな。また Becky! に戻ろうかなと考え始めている。Thunderbird は試してみたけど、相変わらず検索が弱いので対象外だ。Sylpheed の検索は強力そうだけど、検索条件の入力が面倒くさそうだ。Becky! も今戻ると面倒くさいかもしれない。でも Becky! なら自分でプラグイン作れるし。

さて、前置きが長くなってしまったね。ここからが本題だ。

秀丸メールから Becky! に戻りたくなった理由をひとつずつ説明しようじゃないか。

【マクロの衝突】
一番の理由はこれ。秀丸メールには自動起動マクロというのがあって、たとえばメール受信後に起動されるマクロを指定するとか、終了時に起動させるマクロを指定するとか、そういったことが可能になる。これは Becky! プラグインのイベントフックのような使い方ができるので、メールクライアントの機能拡張ができる。これを使用するマクロを作ってみた。


(これは Becky!プラグインで提供されていた機能だ)

ただし、大きな欠点があって、メールエディタ上で動作するマクロと自動起動マクロは両方同時に動作することができず、もしどちらかが動作中にもう片方が動作しようとすると、エラーになってしまう。前述の通り、メールエディタ上でバンバンマクロを動作させているときに、バックグラウンドで定期受信が動作するとエラーになってしまうわけだ。これはとても不快だ。

改善を要望してみた。希望としては双方のマクロが同時に動作することなんだけど、これは仕様上無理だと断られてしまった。では、定期受信はメール編集中じゃないときだけ行って欲しいとお願いしたら、これは受け入れてもらえた。メール編集中は定期受信しないなら、マクロが衝突することもないので安泰だ。でも、メール編集中でも定期受信は行われてしまう。ちなみに、メール編集中とは、メール編集用エディタがアクティブな状態のとき、ということになっている。メール編集中でも定期受信が行われてしまう旨を報告したところ、仕様が複雑で何が何やらわからなくなってしまっているということなので、メールエディタが存在するときは定期受信を行わない、という仕様に変えたいとのこと。僕は OK せざるを得なかった。

新しい仕様になったβ版を今現在使用している。確かに定期受信は行われなくなったけど、メール編集中に来ていたはずのメールを見ずにメールを出すことしばしば。僕はとても長い時間をかけてメールを書くことが多々あり、また誰かのメールの応答を待っている間、ずっと書きかけという風な使い方をするため、メールエディタが開いているときに定期受信がなくなるというのは思ったよりも大きな損失だった。かといってオプションをなくせば元の木阿弥。じゃあ、定期受信時の自動起動マクロをなくせばいいじゃん、ということになるんだけど、それも捨てがたい。

【HTML メールの表示】
僕は HTML メールを書くことは無いんだけど、HTML メールを僕に送ってくる人は大勢いて、なおかつ彼らのメールは引用部分が HTML 的に青かったり、HTML 的な取り消し線を使用していたり、HTML のテーブルを駆使していたりして、HTML メールからテキスト部分だけを抜き出したメールを読んでいると、メールの内容を誤解してしまうことがある。HTML メールを送ってくる人には 2 種類いて、ひとつは単にプレーンな内容を HTML 形式で送ってくる罪の無い人々、もうひとつは HTML メールを確信犯的に送ってくる罪な人々。今までは差出人を見て、装飾された HTML っぽかったらブラウザで見る、ということをしていたんだけど、最近はそれじゃあ対応しきれない。

HTML メールには、通常の HTML のように charset を指定する META タグは含まれておらず、どこで charset を判別するかというと、メールそのもののヘッダの Content-Type である。でも、ブラウザには HTML しか渡されないので当然 charset がわからない。今までは HTML メールは大抵が日本語だったからブラウザの自動判定でなんとかなったが、最近は中国語のメールもたくさん受信するので、ブラウザの自動判別がうまくいかない。
秀丸メールには、対象のメールを Outlook Express で表示する機能があり、これを使用しないと中国語の HTML メールは送信者の意図したとおりに表示することができない。Outlook Express は起動が遅いし、起動する手順も面倒だし、さくさくメールを閲覧する、ということが困難になってしまっている。

秀丸メールは HTML メールの表示機能をサポートしないことになっているため、要望を出すことができない。「本体のメール選択が切り替わったとき」という自動起動マクロが登録できれば、自分でマクロを組めば何とかできるかも知れないけど、そういうタイミングも提供されていないし、要望を出しても作るのが大変そうだから、要望していないというのもある。

という感じだな。

たぶん、この両方の不満を Becky! なら解消できるはず。秀丸メールを離れるのは名残惜しいけど、どうにもならない感じなので、さよならしなくちゃいけない。またいつか戻ってくるかも知れないから、さよならじゃなくて、またね。